学校の坂道の横には、木苺がたくさんなっている。


 幼稚園のときから毎年食べているけど、全然飽きない。とってもおいしい。


 棘がちょっと痛いけど、あまり気にならなかった。


 もしかすると、毎年私が全部食べてるのかもしれない。


 小学生も高学年になると、そんなことはしないらしい。


 そんなこと知ったことではないので、今年も私は木苺を食べつくす。


 刺さった棘は、後になっていつまでも小さく痛かった。



 すいぶん後になってから、木苺は全部なくなったと聞いた。


 町に帰ってきたとき見た場所は、芝生がきれいに生えていた。


 今でも時々あの味を思い出す。


 思い出すたび、故郷なんて私にはないんだと思った。









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